SSサンプル/忠誠
──別に、自分の命なんてどうでもよかった。
明日死のうが、己の信念を貫き通せるのであれば、こんなクソみたいなちっぽけな命など喜んで捨てられる。
ずっと一人で孤独だった俺に手を差し伸べ、正面から向き合ってくれるあいつは、俺にとって光で、希望で。
初めて他人を信じようと、忠誠を誓おうと思えた男だ。あいつのためになるなら、どんな無茶をしても構わない。その結果、体や心が壊れても本望だ。
……けれど、あいつはそれを良しとしない。
「僕以外にキミの命は奪えない、奪わせない。……例えそれが、キミ自身であろうと」
「……それは」
「キミは僕のためなら、どんな無茶もできるんだろう?」
あぁ、ずるい。
そんな呪いのような無茶振り、振り払えるはずがないじゃないか。
あんたは俺にとって光で、希望で、毒なのだから。
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