SSサンプル/髪飾り

黒い髪によく映える白い花の髪飾りは、憎たらしいほどあなたにお似合い。

 私も"その子"みたいに、あなたのお似合いになりたいのに。


 「なれそうも、ないな」


 あなたは誰からも慕われる人気者、私は一人ぽっちでパソコンと向き合う亡霊。

 営業というコミュニケーション能力の高い人間しかできない業種についているあなたはそりゃ人気者にもなるよね、わかる。 

キラキラ輝いているあなたが羨ましい、とは思わないけれど、あなたにまとわりついてくるハエが憎たらしい。 


 「その子みたいに、傍にいられたら」


 その髪飾りのように、常にあなたの傍にいられたら。 

ハエたちからもあなたを守ることができるのに。 


 「あ、今日も仕事に熱中してますね。夢中になるのもいいですけど、たまには息抜きしないと体がかたまっちゃいますよ? ほら、デスクワークってすごく大変ですし」 

「はあ……ありがとうございます」 

「そういえばこれ、似合います?」

 「髪飾り、ですか?」 

「そうなんですよ~! 以前あなたが言ってくれた白い花を選んだんですよ。私には白が映えるんじゃないかって言われて、絶対白にしようと思って!」 


 なに、それ。 期待しても、いいんですか。

TATUMI

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