掛け合いシナリオ/小さい幸せ

○柚原の家(夜)

柚原「(酔っ払いながら)夢っつーのはさあ、叶わないから夢なわけ」

渡辺「はあ」

渡辺「(また始まった)」

柚原「俺的には”目標”って言ってほしいんだよなあ」

渡辺「こだわりがあるんですね〜」


空返事をしながら帰る準備をしている渡辺。

柚原、立ち上がった渡辺を見上げて。


柚原「渡辺はないの、目標」

渡辺「私ですか?」

柚原「出世したいとか恋人ほしいとかさ、なんかあるだろ」

渡辺「うーん、そんな大層なものはなくって。ただ……」

柚原「ただ?」

渡辺「大好きな人のことを大切にしたいですかね」

渡辺「当たり前のことかもしれないですけど、

   自分のそばにいてくれる人を大事にするって案外できてなかったりするんで」


柚原、一瞬キョトンとした後ニコっと笑う。


柚原「渡辺らしくて俺は好きだな」

渡辺「あはは、どさくさに紛れて口説かないでくださーい」

柚原「口説いてねーわ(笑)」

渡辺「じゃ、私帰りますんで」

柚原「えー、もう一杯付き合えよ」

渡辺「(キッパリと)やです」


しっしっと手で柚原をあしらう渡辺。

柚原、机に突っ伏しながら。


柚原「なあ、その大好きな人の中に俺は入ってる?」

渡辺「……さあ、どうでしょう」


渡辺が振り返ると柚原は眠っている。

呆れながら柚原に上着をかけて。


渡辺「あなたが入ってないわけないじゃないですか」